冠動脈バイパス術の長期成績は安定していますので、これがとても大きなメリットですが。でも実は、抗血小板薬を中止しても害が少ないことが挙げられます。たとえば、他の手術が必要になった時、また出血を伴う病気を併発した時など、抗血小板薬を止めないと出血が助長されてしまい、場合によっては生命の危険性が高くなることもあります。ステントだと抗血小板薬を中止しづらいこともありますが、冠動脈バイパス手術であれば中止しても大事に至る事は少ないのです。外科医の願いは“なるべく少ない薬”で、日常を過ごして頂くことです。とはいっても残念ながらそのようにならない事もあります。例えばひどい糖尿病や腎不全など基礎疾患(いわゆる持病)が多い方です。長期にわたり元気でいて頂くためには薬も大切です。でもなるべく薬少なく日常を過ごして頂けたらと思います。
心臓血管外科医 菊地慶太