人工血管の素材について

IMG_0521ダクロン(ポリエステル)やテフロンなどの人工材料を用いて人工血管は作られています。特に大動脈などに用いられるダクロン性の人工血管にはその繊維を用いて織り込む構造をしたウーブン(woven織り)と繊維を編み込んだニット(knitted編み)の構造により作られた二種類の人工血管があります。それぞれの編み・織りという構造の違いで、使用する動脈の部位が違ったりしていましたが、最近ではあまり気にならなくなってきています。もう一つ大きな違いはコーティング剤の変化です。人工血管の繊維から血液が漏れない様にコラーゲンやゼラチンなどを用いていますが、それらに対する体の反応により熱が出たり血液検査での炎症反応がずっと高いままであったりしました。またコラーゲンやゼラチンの固定剤でも同様の反応が出たりしていました。最近がそれら人工血管繊維の構造のなかに高分子化合物を挟んだりして、血液が漏れにくくなり、コーティング剤の使用も減ったせいだと思いますが熱も出なくなりました。安心して手術を受けて頂けます。医学の進歩は物の進歩でもあります。

心臓血管外科医 菊地慶太