生体弁には豚の組織から作られたものと、牛の組織から作られたものがあります。どちらも良い結果のデータがあり、どちらが良い、悪いというのはそれぞれ意見が分かれるようでもありますが、結局のとこ実際にはあまり変わりがないのが実情です。弁の種類というよりも、術後の悪玉コレステロールの管理や血圧の管理などが重要とも云われており、私は後者を重要視しています。ところで豚と牛の違いは、日本ではあまり国民的には関心がないと思いますが、私が留学したシンガポールではとても大切な事項でした。なぜなら宗教が関係するからです。イスラム教とヒンズー教です。シンガポールは多国籍の国です。どちらの国の方々もいらっしゃいますから宗教も様々です。イスラム教の方は豚を食べません。生体弁には豚のものは使用しないこととなっていました。ヒンズー教の方は牛を食べません。ですから牛の生体弁は使用しないことになっていました。間違えてはいけないとても大切なことと教えられました。インフォームドコンセントの時に必ず宗教と生体弁の素材の話をしていたことを懐かしく思い出します。　

心臓血管外科医　菊地慶太